ブランキングエリアの狭間で


2002. 4. 12


ブランキングエリアの狭間で起こっていることを観察してみると結構面白い発見があります。それでは早速、製作したラインセレクタとオシロスコープでテレビ放送の垂直ブランキングエリアを覗いてみましょう。


GCR信号(Line 18)

GCR信号は、放送局側で挿入するゴースト除去の為の補助信号です。8フィールドシーケンスでGCR信号の波形を変化させることで、受像器側のゴーストキャンセラがマルチパスによる信号の歪みをうまく抽出して、受信信号から歪み成分(ゴースト)を除去するのです。


100:75カラーバー(Line 19)

1ラインしかないので、バーではありませんが。このほか、ライン15〜20の間にマルチバーストやラインスイープなど代表的なテスト信号が入っています。受信状態の調査などに使われるのでしょうね。


さて、ビデオソフトの中にはブランキングエリアに細工をして不正コピーを防止しているものがあります。この信号は、ラインセレクタの使い方を覚える練習用としては恰好のソースとなります。コピーガードのかかった映像ソースかどうか判断するには、テレビのつまみ(垂直サイズか垂直位置)を回してブランキングエリアを画面に映してみるのが最も手軽です。コピーガードがあると、右のIMGのようにコピーガード信号を見ることができます。


右の波形は、コピーガード付きDVDソフトの垂直ブランキング期間全体を納めたものです。この期間には3種類のコピーガード信号が含まれます。また、可視部分の同期パルスのレベルが低くなっているのが分かります(何を意図してそうしているのかは分かりませんが)。


後置コピーガードパルス(Line 10〜17)

マクロビジョン社が開発した複製防止機構なので、マクロビジョン信号と言われています。ビデオデッキのAGC回路の特性をうまく利用して、これを誤動作させることにより録画した映像が真っ暗になります。っても、私自身そのようなソースを録画したことがない(VHSデッキ持ってない)ので、実際どんな風になるのかは知りませんが。まぁ、そうなるらしいです。

AGC回路は、映像信号のレベル変動を補償する回路です。同期レベル(常に一定)から全体の減衰具合を検出して入力ゲインを調整しています。同期レベルは、同期信号の立ち上がり前後、つまりシンクチップとバックポーチの電位差から取得しています。そこで、バックポーチの電圧を異常に高くしておけば、AGC回路は過大入力と誤って判断してゲインを目一杯下げてしまうので映像が真っ暗になるのです。50%スライスの高性能(?)シンクセパレータなどは、同期すら分離できなくなってしまうでしょう。もちろん、AGCの無い古いデッキには無効です。

AGC回路はドロップアウト等の瞬間的な変動には反応しにくいようになっているので、垂直ブランキング期間の短い間に一気にゲインを落とすため、複数のパルスを入れているのが分かります。ただ、水平期間の後ろの方まで入れると、Half-Hキラーにかからず水平ドライブに支障を来すので水平期間の前半に集中しているようです。

右の波形は、残光時間を長めにして取り込んだもので、パルスのレベルが固定ではなく変動しているのが分かると思います。パルスレベルが低いときは正常に録画できて、高いときは真っ暗ということになります。


前置コピーガードパルス(Line 260〜3)

動作原理は基本的に後置コピーガードパルスと同じです。フィールドの終わりから垂直同期の直前まで入っています。タイミング的に後置より除去しにくそうなので、コピーガードキャンセラ対策のようです。

Line 260からなので、可視エリアから入っていることになります。カラーバーストが派手に切れていますね。いやぁ、すごい波形です(^^;。


CGMS-A(Line 20)

ビデオソフトの複製管理システムの一つ。文字放送や字幕データなどと同様にブランキングエリアに乗せられるデジタル信号です。これは信号に細工するコピーガードとは異なり NTSC規格の範囲内の信号なので、テレビ回路や画質への悪影響はありません。しかし、受け側が積極的にCGMS-Aをデコードして処理しない限り複製管理が有効になりません。デジタルビデオ機器(DV/DVDやキャプチャボード)は大体対応しているようですが、アナログ機器の多くには無効らしいです。


カラーストライプ

カラーバーストに細工してビデオデッキの色復調回路を誤動作させる方式です。画面上で色の変な横筋が出るのでカラーストライプと言われています。カラーバーストの無いコンポーネント信号には、当然のことながら存在しません。

右の波形は、正常なラインとカラーストライプのラインの水平ブランキング期間を取り込んだものです。カラーストライプの部分ではカラーバーストの位相が途中から反転しているのが分かります。バーストの位置もなんか変です。

普通のテレビは信号の劣化にとても強いので、このような波形でも何とか色を正しく再生できるのですが、ビデオデッキの色信号処理回路は弱いものが多いようで色が変になるのです。もちろん、デッキの特性によって効かない場合もあるようです。手持ちのキャプチャボードでも出ました。

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