今回は、キット化された MP3プレーヤ製作の際のポイントをいくつかご紹介してみましょう。
また、ただ組み立ててケースに入れて終わりというのではなく、独自の改良を加えて発表してくれたりしたらそれこそ企画者冥利に尽きるというものなんですが、まだそこまでいじり倒してくれる方はいないみたいです。
まぁ、Firmware書き直しは当然として、少なくともCFやMMC置き換えや表示器追加くらいは誰かにやってもらいたいですね。あと、メモリカードI/Fをバス結線にして巧く割り当てれば USBや Ethernetコントローラくらいは簡単に付けられるんじゃないかな。もっとも、そこまでやるような人はキットなんか買わないで、完全オリジナルなポケットMP3プレーヤを組んでいるのでしょうけど :-)
一方で、意を決してキットに挑戦しながらもあえなく失敗している人が結構いて、その殆どが半田付けの失敗によるものです。回路自体はきわめて単純で無調整なので、失敗するところといえば半田付けくらいしかないんですけどね。でも、半田付けは電子工作の「基本のき」なので、そんなことで失敗されては困るんですが(笑)。例の脅し文句が効いているせいか、成功率50%以上いっているらしいので、わたしの予想よりは良いようです(^ ^;(自作キットとしてはちょっとハードだったかも…)。
キット版やこのレポートの内容に関する技術的なサポートはこちら。ただし、組み立て等初歩的な質問はご遠慮ください。
まず、こて先は写真に示す程度の太めで短い物が適しています(写真のこて先は HAKKO MACH-I の標準品)。これは、QFPに限らず電子工作全般に適したオールマイティなものです。細長いこて先は熱容量が不足しがちで使いにくいものです。QFPの半田付けに限るなら、鏨の刃のように直線的にカットされたこて先の方が良いのですが。
半田はφ0.6〜1.0mmの高級品が良いでしょう。あまり安い物は半田の流れが悪かったり、フラックスが飛び散ったりするので、避けたほうが無難です。
QFPの場合、ピン1本づつ半田付けすると時間がかかるうえブリッジは避けられないので、普通は一辺をまとめて一気に付けてしまいます。基本的な手順は次のとおり。
なお、半田付け全般に言えることですが、フラックスが半田の表面を覆って表面張力が保たれているうちに済ませなければなりません。手早く済ませるには、接合部を十分に予熱してから半田を流すのが鉄則(けっこう守られていない)。てこずってフラックスが蒸発して半田が流れなくなってしまったら、新しい半田を少し供給してフラックスを補給してやりなおせば OKです。
なお、QFPの半田付け作業ではこて先は先端ではなく寝かせて側面を使うのがコツで、液体が狭いところに入り込もうとする性質を巧く利用します。どうしてもブリッジが取れない場合は、半田吸い取り線で除去するのもひとつの手です。だたし、半田を取りすぎてピンの浮きが発生する場合があるので要注意。ICは長時間熱を加えても壊れることは滅多にありません。焦らずに落ち着いてやりましょう。
そもそも半田付けというのは体で覚えるものなので、とにかく数をこなさないと上達しません。ブリッジした半田の取り方などはジャンク基板を買い込んできて練習すると良いでしょう。
基板のマウント孔にはランドを設けてあります。これは、写真に示すようにナットを半田付けして使用するためのものです。これにより、基板を片側からビス止めすることができます。ただし、強い衝撃が加わると剥離する場合があるので注意。半田面のスペースはナットの高さで制限されるので、部品の足は短く切り詰めておく必要があるのは言うまでもありません。
DSPの周りには4つの孔があります。実は、これは電池ボックスを固定するために開けたもので、単四×2のホルダ用に合わせて設計しました。しかし、単三の1セル動作に変更されてしまい、電池が基板の上に載らなくなったので、キットでは無用の長物となっています。
それに伴い、単三の1セル動作では秋月のケースに入らなくなっています。単四の2セル動作に変更すればぴったりと収まるはずです(一部抵抗値変更の必要あり)。元々そうするように基板を設計したので(^ ^;
基板をケースに組み込むとボタンが中に引っ込んでしまい、押せなくなってしまいます。殆どの市販製品はケース一体型のボタンが付いていて、それを介して基板上のスイッチを押すようになっています。それらと同様に樹脂の整形で作るのは無理ですが、近いものは作れます。
左の IMGは、自作したボタンです。φ5.0の真鍮丸棒を適当な長さに切り、抜け落ちないように片方に薄板を貼り付けています。角棒で作ったり、キートップに彫刻を入れたりと体裁に凝ってみるのも良いでしょう。
キットには基板に適合したヘッドホンジャックとDCジャックは含まれていません。これ以外にも代用品がいくつか使われており、その辺のアバウトさは秋月級です(笑)
DCジャックの型番は HEC3300-01-020 (ホシデン)、ヘッドホンジャックは HSJ0887-01-510 (ホシデン) です。前者は千石電商に置いてありますが、後者は秋葉界隈では見当たらないようなので、ほかのもので代用するしかありません。これらのコネクタには力が直接加わるので、接着剤(SuperXなど)でしっかり固定しないとパターン剥離の原因になります。
一部の DSP (MAS3507D)では内蔵 DC-DCコンバータが起動しにくいものがあるようで、PLAYボタンを押しても電源電圧が 3Vに上昇しないという症状となって現れています。これは MAS3507Dのバグで、これを回避するには電源 ON時に DCENピンを操作してやる必要があります。具体的には、DCENピンに "L"→"H"の鋭い立ち上がり波形を加えてやれば良いようです。そのための付加回路を示しますので、もしもそのような現象が起きた場合は試してみてください。一発で起動するようになります。(その旨言えば、部品を送ってくれます)
R3の追加だけで解決する場合もありますので、まずそれから試してみましょう。TC7S14は、74HC14で代用可。推奨動作電圧は 2Vからですが、1V以下でも動作しますので、1セル仕様でも十分使えます。なお、この不具合は現 F10版で起きるもので、次のバージョンの MAS3507D(G10版)で修正されるそうです。
あまりにも初歩的なことなので、ここに書くようなことではないと思いますが、それでもよくあるトラブルや疑問とその対策を簡単にまとめてみました。
※F/W書き込みツールは DOSまたは Windows9X環境でのみ動作します。なお、書き込み中は PLAYボタンを押さえていなければなりません。
可変ビットレートでエンコードされた MP3データを再生すると発生することが多いようです。4MHz動作で再生可能なビットレート(256kbps)を瞬間的に超えることによるものと思われます。エンコードの際、最大ビットレートを抑え目に設定するか 128kbpsの固定ビットレートで試してみてください。
また、データ転送中にデータが壊れていることが原因となっている場合もありますので、次の項目も見てください。
DOSプロンプトに降りて mpxferを起動してはいけません。そのまま起動すると 6MHz動作用のタイミングで送ってしまうので、4MHz動作のキットでは途中で同期を失って止まったり、転送したデータが壊れたりする場合があります。
このため、ターミナル画面から転送を開始しなければなりません。 Alt-Wでマクロが起動して、ファイル選択、wコマンド発行、動作周波数の認識、mpxferの起動を自動で処理しますので簡単確実です。Windows9X環境ではファイル入力のとき送りたいファイル(またはプレイリスト)を DOS窓にドロップすれば入力が簡単でしょう。
どうしても DOSプロンプトから使いたい場合は、次のように /Sスイッチを付けて 4MHz用のタイミングで起動してください。
mpxfer /s <ファイル名>
8MBから128MBまで3.3V版のスマメならどれでも OKです。ID付き/無しも関係ありません。また、スマメのベンダーは数多くあるものの、スマメのメーカー自体は東芝と Samsungの 2社しかありません。東芝製もSamsung製も動作確認されているので、ベンダー毎の違いは無いと考えてよいと思います。
3.3Vと 3Vは同じ物です。最近の 3.3Vメディアは 3Vと短縮して表記されることが多いようです。
……(汗)
機能を拡張した例として液晶表示器の追加をご紹介しましょう(写真はこのページの先頭)。トラ技の記事でもボソッと振っておいたけど、やっぱり誰もやってくれないみたいなので(^ ^;
右の図は、本器に汎用LCDモジュールを接続する場合の回路です。信号線はコネクタのところから引き出すと良いでしょう。メモリカードのバスと制御線の一部を共用にして、LCDモジュールのセレクト信号を空いているポート(PD7)に割り当てています(とても簡単だよね)。
でも、すんなり動いてしまってはあまり面白味がありません。だからというわけではありませんが、だた接続しただけではダメなようになっています(笑)。LCDモジュールはそのままでは 3Vの電源電圧で使えないので、ちょっとした改造が必要なのです。
さて、うまく接続できましたか? それではLCD対応の F/Wを書き込んでみましょう。え、F/Wはどこにあるですって? そんれぐらい自分で書きなさいよ!(....って、冗談だってば(笑))。まぁ、そう言いたいところですけど、あまりいぢわるするのもアレなので、ちゃんと公開しておきます(^_^;。
2セル動作に変更すれば単純に倍になります(そんなこと分かりきっているって(笑))。2セル動作にするには、それ用に一部の抵抗の値を変える必要があります。セル数を変更する以外の方法としては、次のようなものがあります。
これが一番効くでしょう。MAS3507D内蔵のDC-DCコンバータの出力電圧は、デフォルトで 3.0Vです。しかし、実際には高め(3.1V以上)に出る傾向があります。DVMで測ってみて高いようなら mpc_iic.asm中の set_dcdcルーチンのコメントアウトを外して適当な値を設定することにより調整できます。ただし、東芝製スマメは動作範囲の下限が 3.0Vなので、それ以下には下げられません。Samsung製スマメは 2.7V動作が可能です(Mfr=98で東芝、Mfr=ECで Samsung)。
SBDを超低ドロップタイプ(1FWJ43Nなど)に交換すれば DC-DCコンバータの効率が少し改善されて電池寿命が延びます。せいぜい10分程度でしょうけど。
NiCd電池の大電流放電に安物の電池ボックスを使っちゃならんというのは常識ですけど、本器についても同じことが言えます。あ、知らない人もいるかもしれないので、簡単に教えておくね。
問題は電池ボックスのコイルバネにあります。何たってバネ鋼(つまり鉄線)を使っているわけですから、これの抵抗がバカになりません。単三用の場合は、1本当たり0.5Ω程度もあるのです。仮に1A取ったとすると、0.5V×バネの本数だけドロップするわけです。電池ボックスによっても異なり、写真に示す白いものは0.5Ω程度、別の黒いものは細いバネにもかかわらず0.2Ω程度と小さ目でした。
本器の場合、1.0V入力時の消費電流は 200mA程度なので、バネで0.1Vドロップする計算になります。つまり、パワーの1割をバネに食われていることになります(結構大きいよね)。そんな電池ボックスはさっさと捨てて、燐青銅の板バネを使った高級品に取り替えるか自作するかしましょう。簡単にやるには右の写真のようにバネをバイパスしてやる手もあります。
バッテリ寿命を延ばすには回路上での工夫が重要ですけど、やっぱり性能の良い電池を選ぶのが手っ取り早いですね。そんなわけで、単三電池をいくつかのブランドで買い集めてきて特性を取ってみました。
で、右の図がその結果(電池ベンチじゃ(^^))。300mAの定電流負荷で測ったので、MP3プレーヤの動作条件とは異なります。スイッチングレギュレータを内蔵した機器(MP3プレーヤ、デジカメなど)は定電力負荷なので、Ah容量よりもエネルギー量(ブランド名の横に表示)で比べると良いです。つまり、同じAh容量でも放電中に高い電圧を保っているほうが長持ちというわけ。
まぁ、結果のほうはというと、どの電池もどんぐりの背比べといった感じで、パナと東芝がトップ・タイですか。東芝のは \40/本(秋葉価格)と安価なので、コストパフォーマンスはこれが最高のようです。ちなみに、海外ブランドはダメダメ(^^;
本器では、スマメを独自フォーマット(不良ブロック管理、トラック管理など全て)で使用しています。このため、一度本器で使用したスマメはスマメ対応機器では認識されず、使いまわしができません。これは、スマメ規格のフォーマット情報を破壊してしまうからなんですが。
現在のところ、スマメの物理フォーマット規格は古いものが限定的に出ているだけで、フルスペックは一般には公開されていません。したがって現時点での対応は不可能です。今後それが一般公開されたら、スマメ規格で物理フォーマットしなおす機能も追加しようかと思っています。興味のある方は、SSFDCフォーラムを定期的にチェックしましょう。
ストレージデバイスとしてスマートメディアを使っていますが、これを CompactFlashに置きかえることも簡単にできます。実際の接続例を示します。データバスは下位バイトだけしか接続していないので、8bit I/Oモードに定義して使用する必要があります。ちなみに、F/Wは公開しません(いや、まだ書いていないんで(^^;)。