2002. 1. 30
接点入力に限ったことではないですが、ICの入力に対して抵抗によるプルアップ処理が施される場合がよくあります。また、未使用入力の処理に大量のプルアップ抵抗が使われているのがよく見られますね。プルアップ抵抗は主に、そのラインに何も接続されずフローティング状態になったときに電位を固定する役割を持ちます。接点入力においては、接点の負荷抵抗として H レベルと L レベルを作り出すために付けられます。それでは、プルアップではなく、プルダウンではダメなのでしょうか? プルダウンでなく、プルアップが多く用いられる理由は主に次のような点にあります。
昔のTTLの入力回路は、"H"レベル入力では殆ど電流は流れず、"L"レベルで外部に電流が流れ出すという構成でした。つまり、"L"レベルで入力回路がアクティブ状態になるようになっていたのです。その流れのせいか、現在においてもICの入出力のアクティブ極性は、多くが"L"レベルです。プルアップなら、未使用状態(接点入力では、接点非動作時)において非アクティブにすることができます。
複数のオープンコレクタ(ドレイン)出力を接続してワイヤードORを構成することができますが、特殊なもの以外はシンク駆動なので、ワイヤードORは必然的にプルアップとなっています。接点入力の場合はプルダウンでも構わないのですが、それに倣ってプルアップとされているようです。
昔のディジタルIC(TTL)の電源電圧は5Vで、入力のスレッシホールドレベルは、1.0~1.5Vでした。電源電圧から見ると、かなりグランド寄りといえます。入力にノイズが乗ったとき、スレッシホールドをまたいでしまう危険は入力が"H"レベルにあるときより、"L"レベルにあるときの方が高くなります。アクティブ"L"(定常状態で"H"レベル)は、ノイズマージンの点でアクティブ"H"より有利だったのです。ノイズの乗ることの多い接点入力では特に言えることです。
現在は、H/L対称動作のCMOS ICが主流になり、アクティブ"L"にこだわる理由が無くなっています。それでも多いのは、慣例のせいもあるのでしょう。
基板から機器内のスイッチの間は、リターン線とペアの2本で配線されます。また、回路基板のグランドと筐体は直流的に接続されていることがあります。そこで、万が一スイッチへの配線が筐体とショートしたときのことを考えてみます。
このとき、リターン線がグランドの場合は大したことにはなりませんが、リターン線がホット側だった場合は、ショートして大電流が流れてしまい危険です。プルアップならリターン線がグランドになるので、安全というわけです。