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2002. 10. 9

一文字ドリルを使おう


電子工作においてもケースの製作など機械加工が必要になってきます。日頃使うツールのチューンナップで作業効率をアップしましょう。

機械加工の基本となる穴開け作業ではドリルを使うことになります。一般の金工用ドリルの刃先は角度が118°で円錐状です。これに対し、180°前後になるように研がれたものを一文字ドリルといいます。正面から見ると刃先がほぼ一直線になることからそう呼ばれているようです。特に刃先が180°を越えるものは板金の穴開けに威力を発揮します。

右の図に示すように、一般のドリルは貫通するとき中心から貫通するので、押し広げられた切りくずが穴の周囲にバリになって残ってしまいます。また、薄板に径の大きな穴を開けるときは、外周が決まる前に先端が貫通してセンターを失うので、真円度や位置精度も悪くなる傾向があります。これに対し、一文字ドリルは外周から先に貫通するので、真円度や位置精度も良好に仕上がります。バリがほとんど残らないのでバリ取りの必要もありません。このようにシャーシ加工に優れた特徴を持つドリルなので、よく使う径の一文字ドリルをいくつか揃えておくと良いでしょう。


揃えておきましょうと言っても、一文字ドリルはどこでも売っているというものではない(最近は置いているホームセンターもあるようですが)ので、適当なドリルを研ぎ直して作ることになります。でも、ドリルを精度良く研ぐのは簡単ではありませんし、特に一文字ドリルは熟練を要するそうです(ぉ。

まぁ、何事も挑戦ということで興味があるならやってみるのも良いと思います。左の写真は製作した一文字ドリル(φ3.5mm)です。素人でも慣れれば結構まともな形にできるようですね(っても10年くらいやっているけど(^^;)。一文字ドリルはセンタリングのためチゼル(中心の稜線)が少し飛び出すように整形する必要があるため、回転砥石の角を使って研ぐことになります。このため、研ぎ始める前に砥石の角を整形しておかなければなりません(回転砥石を研ぐ砥石ってのが売っています)。作業は細いドリルほど難しいので、最初は数mm以上のドリルで始めると良いです。なお、ここで言うまでもありませんが、機械加工の基本を守って安全に作業しましょう。


最後に銅板(t0.3mm)とアルミ板(t1.0mm)に開けた穴を裏側から見た写真を示しておきます。一文字ドリルで開けた穴(右側)はきれいに仕上がっているのが分かります。