NECの1チップマイクロコントローラーに V53があります。これらのチップは V33をコアプロセッサとして周辺インターフェースを1チップに集積したものです。V53は機能的には V50と同等で、V50のコアプロセッサを V30から V33に置き換えたものと思えばよいでしょう。また、コアが 8086系ということで DOS上の開発ツールを流用できるのも使いやすさのポイントです。V53の主な仕様は次のようになっています。
コアプロセッサ | V33/V33A互換 |
シリアルI/F | 1チャネル (8251互換) |
カウンタ・タイマ | 3チャネル (8254互換) |
DMA | 4チャネル (8237/8271互換) |
割り込みコントローラ | 外部 8系統 (8259互換) |
外部バスI/F | アドレス 24bit (EMS風のアドレス空間拡張機能あり) データ 8/16bit (ダイナミックバスサイジング) アドレス/データは完全分離。最小 2クロック/1バスサイクル。 プログラマブルウェイト制御(0~7) メモリリフレッシュ制御 |
パッケージ | 132ピンセラミックPGA。120ピンプラスチックQFP。 |
その他 | クロック発振回路など |
電気的仕様 | 動作周波数:2~20MHz 消費電力:900mW (@16MHz) |
V33はV30の外部バスのアドレス/データを分離して、命令の実行をマイクロコードでなくワイヤードロジックで行うようにしたものです。このため、同クロックのV30に比べて2倍程度の高速化となっています。同クロックのi80286と同等の性能と考えて良いでしょう。
V53とV53Aの違いはそのままコアプロセッサのV33とV33Aの違いです。V33では未定義命令割り込みなどがi8086系とは違ったものでしたが、V33Aはこれをi80286と同じにしてあります。
V53の内蔵ペリフェラルは全て I/O空間にマッピングされています。それぞれは任意のI/Oアドレスにリロケートできるようになっています。また、個々の内蔵ペリフェラルは互いに独立しているので、必要に応じて外部で配線する必要があります(特に割り込み)。
V53の外部バスは 16bitが基本ですが、接続されるデバイスに合わせてバス幅を変えることもできます。具体的には、8bitデバイスに対するアクセスのとき外部アドレスデコーダからBS8信号を返してやります。するとBIUは8bitデバイスであることを認識して下位バイトのみを使ってアクセスするようになります。
これをダイナミック・バスサイジングといいます。この機能のため、V2x/V3xシリーズのような8bit版/16bit版といった区分は無くなっています。
プログラマブルなウェイトコントローラーを内蔵しています。I/O領域と6ブロックに分割されたメモリ領域、リフレッシュサイクル、割り込み応答サイクルなどにウェイトを設定することができます。各ブロックには個別に0~7クロックの自動ウェイトと外部からの追加が可能です。また、外部ウェイトを追加する場合もサイクルの最後でREADYをサンプルするので効率が良く、V25/V35のようなバスサイクルの無駄はありません。
V53をもっと詳しく知りたい場合は、次に挙げる資料を参照すると良いでしょう。残念ながら V53をよく説明した文献は NECの発行する物以外には思い当たりません。
V53を使ったボードマイコンを作ってみました。実際の使用例としてまとめてありますので、こちらもご覧ください。