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2014. 6. 29
電子回路に使われるコンデンサは、大きく分けて電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサの3種類に分類することができます。これらはそれぞれ特徴を持っていて、要求仕様に応じて使い分けられています。容量別では、1μF~10μFを境にそれより大容量のものは電解、小容量のものはセラミックやフィルムといった棲み分けがなされてきました。最近はセラコンの小型大容量化が急速に進み、100μFクラスのものも現れはじめました。このように、セラコンはごくありふれた電子部品ではあるものの、特有の問題を持っているため、それが原因で思わぬ失敗をすることもあります。
セラコンにはその温度特性により、温度補償用と高誘電率系という2つの種類があります。
高誘電率系セラコンは大容量が得られるのが特徴です。しかし、図1に示すように温度による容量変化が大きいという性質があります。特に、安価でよく使われていたY5V,F特性(-80%~+20%)などはセンサになるほど温度に敏感で、電源パスコン以外の用途はありませんでした。最近はパスコン用途でもX7R,R特性やX5R,B特性が広く使われるようになっています。これらも温度特性は良いとは言えないので、時定数に使う場合は注意が必要です。
温度補償用セラコンは、定格電圧50V、1nF程度までの範囲に限られ、10nFを越えるものは殆ど高誘電率系となります。温度補償用は、温度、DCバイアス、経年による容量変化はなく、ほぼ理想コンデンサといえます。名前が示すように、精密に制御された温度特性で作ることも可能で、一昔前のラジオセットでよく使われていました。
高誘電率系セラコンで忘れてはいけない重要な特性は、加える電圧によって容量が変化するということで、容量値を額面通り受け取ることはできません。右の図にDCバイスによる容量変化の例を示します。図2の例では、50%定格で1割、100%定格では半分の容量が失われています。図3の例では、20%定格でも半分、100%定格では9割もの容量が失われています。蓄積されるエネルギも理想をはるかに下回ります。これは、荷物を積むと底突きするサスと同じで、コンデンサとして機能していないことが分かるでしょう。しょせん、シャコタン的なコンデンサ...。もはや誤差や温特のレベルをはるかに超えたとんでもない話ですが、セラコンとはそういうものなのです。
これを理解しないまま電解コンデンサを代替したりすれば、「リプル特性が悪化した!」などということにもなりかねません。大容量セラコンは大体X5R特性なので、この点を考慮した上でデータシートで特性を確認する必要があります。容量値に意味があるときは底突きしない程度の電圧、X7Rでは定格の50~60%、X5Rなら定格の10%以下で使うのが無難です。もちろん、このような非線形素子をオーディオ回路に使ったりすれば、いわゆる「味わい深い音」が生み出されることでしょう。
で、その非線形性で失敗したことがあるので、ひとつ紹介してみます。その昔、手っ取り早く組んだマイコン基板、電源ラインの処理は電解コンデンサ(100μF)+セラコン(100nF)が常識のところ、手抜きしてセラコン(1μF)だけで済ませていました。さて、電源を5Vにセットしてクリップをつないてみると、その瞬間に大電流が...あれー??? どうやら8pinマイコンがラッチアップしているようです。原因が分からないので、オシロで当たってみたところ意外な波形が観測されました。リード線のインダクタンスとセラコンで共振回路が構成されて、電源ONの瞬間に電圧が瞬間的に12V程度に跳ね上がっていたのです。あぁ、失敗失敗 :-)
それにしても12Vは妙ですね。理論的にはピークが10Vを越えることはありえず、Qにもよりますがせいぜい2~3V程度のオーバーシュートに止まるはずです。これを確かめるため、図4に示すような回路で実験してみたところ、図5,6に示すような結果が得られました。このように、共振回路のコンデンサに非線形性があると、高電圧パルスが発生するのです。そういえば、非線形コンデンサを使った蛍光灯電子スタータ回路というのがトラ技の記事にあったようななかったような...。
セラミックの誘電体は、圧電サウンダ程ではないにしても同様な電歪効果を持っています。つまり、交流電圧を加えると鳴くわけですね。そして逆に振動を与えることにより電圧を発生します。微少信号を扱う回路ではこの点を考慮しておかないと思わぬ失敗をすることがあります。